インタビュー
世界で直面した「人間と宗教」の問い。西欧近代を超えて親鸞思想と仏教の神髄に迫る
仏教学研究科 仏教学専攻
2025年3月修了
篠田 裕さん Shinoda Masahiro
大手製造メーカーに勤務し、企業派遣による英国留学をはじめ、スペインやロシアでの現地法人駐在など、長年にわたりグローバルなビジネス最前線で活躍。定年退職後、東京仏教学院を経て2023年に武蔵野大学大学院通信教育部仏教学研究科(修士課程)へ入学。2025年修了後、現在は同博士後期課程にて研究を深めている。
世界最前線での実体験から深まった、「西欧近代」と「宗教」への問い
大学時代にキリスト教青年会(YMCA)の読書会や西洋近代経済史のゼミに参加し、「近代化と宗教」について考えたのが私の学びの原点です。その後、社会人となり企業派遣での英国留学や、スペイン・ロシアでの海外駐在を経験しました。異なる文化や歴史の最前線に身を置くなかで実感したのは、キリスト教文化と深く結びついた「西欧近代のシステム」をそのまま日本に持ち込んでも、本当の意味で日本社会に根付くことは難しいということでした。
では、日本人にとっての「人間のあり方」や「世間」とは何なのか——。そう模索する中で出会ったのが、歴史学者・阿部謹也氏の著作です。氏の考え方に深い感銘を受けると同時に、氏が問題の処方箋として示唆していた「親鸞思想」をもっと本気で勉強したいと思うようになりました。定年退職後に東京仏教学院で学んだ後、阿部謹也氏の問いをさらに本格的な学問として探求するため、東仏の卒業生を温かく受け入れてくれる武蔵野大学大学院通信教育部への進学を決意しました。
原始仏教から近代仏教まで。知の土台を固める体系的な学びと、語り合える仲間

武蔵野大学大学院の最大の魅力は、原始仏教から大乗仏教、そして明治以降の近代仏教に至るまで、仏教全般を総合的・体系的に学べる点です。
特に『仏教学特論』の授業で、大乗仏教の二大基礎理論である「中観(ちゅうがん)」と「唯識(ゆいしき)」の基本をじっくり腰を据えて学べたことは大きな収穫でした。日本の仏教思想や様々な文献を読み解く上で、この基礎知識は不可欠です。受講前はいかに自分が不十分な理解のまま文献を読み飛ばしていたかを痛感させられました。また、現在のお寺が直面する経営課題や海外布教の現状などを知る授業もあり、現代社会で自分が仏教に向き合う意味を多角的に考えることができました。
通信制ではありますが、ここで出会えた学友の存在もかけがえのない財産です。年に数回、集まって食事をしながら熱く仏教談義を交わす時間は、人生の大きな潤いになっています。
時代の壁を超えて挑む研究テーマ「阿部謹也と親鸞思想」
私の修士課程での研究テーマは「阿部謹也と親鸞思想」です。阿部氏は西洋中世社会史の専門家であり、最初は「仏教学研究科のテーマとして受け入れていただけるだろうか」と少し不安もありました。しかし、先生方は私の問題意識を否定することなく、むしろ快く受け入れ、温かく指導してくださいました。この研究テーマの自由度と懐の深さには心から感謝しています。
修士課程を修了した現在は、さらに探求を深めるために博士後期課程へ進学し、引き続き同じテーマで研究を続けています。現在は下田教授の『インド語仏教文献講読』も聴講していますが、原始仏教の根底にある「仏陀の瞑想体験」や「身体性と知の不可分性」を学ぶにつれ、身体と知を切り離す西欧的知性との対比がより明確になってきました。知識を得るだけでなく、思考のフレームワークそのものが広がっていく手応えを感じています。
これから入学を目指す方へ

武蔵野大学大学院通信教育部は、これまでの人生経験や社会人としてのキャリアを踏まえた上で、改めて仏教について深く学びたいと考えている方に心からおすすめできる場所です。
一人ひとりが抱いてきた多様な問題意識や問いを尊重し、柔軟な学びの場を提供してくれる風土がここにはあります。自分のペースで学業と向き合いながら、専門性を高め、深い知の探求へと踏み出すことができるはずです。迷っている方は、ぜひその一歩を踏み出してみてください。
【ピックアップ】篠田さんが語る「おすすめの授業」
- 現代仏教特殊研究
ゲスト講師を招き、日本における仏教の実情や海外布教の現状など、幅広いリアルなテーマを学べる刺激的な授業です。 - 近代仏教特講
明治維新以降の廃仏毀釈や、西欧近代・キリスト教との対峙の中で日本の仏教界がどう展開したかを広く学べる非常に魅力的な講義です。 - 真宗概論
親鸞教義の基礎を原典や七高僧の著作から丁寧に読み解きます。親鸞思想の独創性と伝統の継承を深く理解することができます。
【特別対談コラム】
人生の経験を重ねた今だからこそ、深く学べることがある。武蔵野大学大学院通信教育部仏教学専攻で、人生の問いを学問に変える

