インタビュー
地域とつながり、人間学を深めたい
人間社会研究科 人間学専攻
2024年4月入学
代田 雅揮さん Masaki Shirota
人間社会研究科人間学専攻に2024年4月に進学。 大学事務職員として働く傍ら、育児や地域活動に積極的に取り組む。2025年に在住の福井県鯖江市にて「ワーク・ライフ・バランス賞(個人部門)」を受賞。オカリナ演奏者や保護司としての一面も併せ持つ。
地域の現場で感じた疑問が、学びへの扉を開いた
私は休日に地域活動に取り組んでいます。活動の中で、高齢者の中には役割を持つことで前向きな気持ちを保っている方がいる一方、活動の場を失ったり、外に出ること自体がおっくうになる方がいるという現実を知りました。こうした違いはどこから生まれるのかを、経験だけでなく理論的にも理解したいと考えるようになり、ライフサイクル論をはじめとする心理学の視点に関心を持つようになりました。高齢者の公民館活動や生涯学習は、人生の後半期における自己肯定感や役割意識と深く結びついた営みであると感じています。その意味を学問として捉え直し、地域に還元したいと思ったことが、大学院で学びを始めたきっかけです。
福井の田園から、オンラインで大学院へ

私が武蔵野大学大学院を選んだ理由は、通信教育という学修形態が、自分の生活と無理なく両立できる環境だったからです。田んぼが広がる福井県で暮らしながら、地域活動や家庭生活を続ける中で、時間や場所に縛られず学べることは大きな条件でした。入学後、一日中地元の図書館で文献研究を行ったり、子どもが寝静まった後で課題を進めたりと、自分のペースで学修を進められています。そして、各特講や特定課題研究についてはすべてオンラインで済ませることができたので、職場に迷惑をかけることなく学修することができました。
※写真は学校法人武蔵野大学設立100周年記念の公式Tシャツを着て撮影に臨んだ様子(2024年秋)
現場の経験を、理論で言語化する力

人間学専攻での学びを通じて、人の発達やアイデンティティ形成、生涯にわたる心理的課題、社会との関係性について理解を深めてきました。これまで自分が現場で感じてきたことを言語化し、整理する大きな手がかりとなっています。取り組んだ研究では、高齢者の生涯学習がもたらす心理的・社会的効果に着目し、福井県の地域特性や公民館活動との関連を踏まえながら考察を進めました。学びが地域の現場の理解を深め、現場での経験が学びを具体化してくれる――その循環を実感しています。
変える力より、待ち支える力を

大学職員としての学生対応や、地域の方々と関わる中でも、支援する側の都合ではなく、その人自身のペースや語られていない思いを尊重する関わり方を意識するようになりました。すぐに何かを決めたり答えを求めたりするのではなく、一度間を置く選択ができるようになったと感じています。また、ボランティア活動や町内清掃のような何気ない場面でも、人がそこに集まる理由や、続けていること自体の意味に目が向くようになりました。学びを通して得たのは、何かを「変える力」よりも、「人や場が育つのを待ち、支える姿勢」であり、それが仕事や生活の中で静かに活きていると感じています。
※写真は地元福井県で開催したチャリティーコンサートでのオカリナ演奏の様子(2025年春)
生活を変えずに、学びを始める選択肢

仕事や家庭、地域活動、学びのいずれかを切り離すのではなく、生活の中でつなげながら続けてきた姿勢を、市民の方々が見守ってくださり、そして市へ推薦という形で「ワーク・ライフ・バランス賞」を受賞させていただきました。これまでの歩みが地域に届いていたのだと実感できる大きな励みとなっています。武蔵野大学大学院には、通学を前提とせず、通信教育で修士課程を修了できる環境があります。進学を迷っている方には、今の生活を大きく変えなくても、学びを始める選択肢があることを伝えたいです。学びは特別なものではなく、続けていくうちに、仕事や人との関わりの土台になっているものだと思います。

