インタビュー
多角的な視点から知識を深め、気持ちに寄り添える看護師へ。
人間学専攻
2012年 入学
岩本 智香子さん Chikako Iwamoto
履修内容
- グリーフケア特講(S) [スクーリング]
- 比較宗教特論 [スクーリング]
- 人間倫理特論 [スクーリング]
- 精神保健学特論 [スクーリング]
- ターミナルケア特論 [スクーリング]
プライベート
看護師という職業は夜勤もあり、日常生活では家族に迷惑を掛けることが多くなってしまいます。休日も研究会などに出席する機会が多いので、なおさらです。そんな私を理解してくれる夫には、いつも頭が下がります。
自分が描く看護師像を実際の現場で見失うこともあり、 看護を色々な側面から見つめ直し、視野を広げたいと考えました。
私は長年にわたり、看護師として救命救急センターやICU(集中治療室)に勤務し、現在に至っています。ICUの現場で看護師に求められるのは、重症患者の血圧や脈拍数などのバイタルサインや各種データを観察・把握し、必要な薬剤を準備し、検査や処置を予測しながら迅速に動く能力であることは間違いありません。しかし、それだけでは果たせない看護師の役割もあるのではないかと感じ、自分が描いてきた看護師像を見失いがちになることもありました。
「生命の危機的状態にある患者や家族に寄り添い、苦しみを理解してケアを行うことが出来ているだろうか?」、「私が行ったケアが本当に患者や家族の理解と援助に繋がっているのだろうか?」。そんな自問を繰り返す中で、心理学を学習することによって何かを得られないかという想いから、2004年に武蔵野大学通信教育部の人間関係学部人間関係学科・心理学専攻(入学当時)に3年次編入学しました。
心理学を学び、そして人間学というそれまで知らなかった学問領域と出会うことによって、看護師の経験しかなかった私の視野が広がり、物事の見方や考え方も変わっていったのは大きな収穫であり、社会の中での人間関係を構築していく上でも、人間学が重要な役割を果たすことを強く認識できました。しかし、いずれの学問も大変奥が深いために、理解がまだまだ足りないことを実感しています。学部時代に達成できなかった課題も含めてさらなる探究を続けていきたいと考え、大学院への進学を志しました。看護師である前に一人の人間として「人間とは何か、生命とは何か、看護とは何か」などについて改めて考え、自分の言葉で語れるようになりたいと思っています。
スクーリングには積極的に参加することを心掛け、ディスカッションなどを通じて切磋琢磨に努めています。
時間的な拘束をあまり受けることなく学習できる通信教育だからこそ、多忙な看護師の仕事と平行して学習を継続できているのだと思います。インターネットによる授業も大変理解しやすいと感じていますが、その上で、私はできる限りスクーリングの授業に参加するようにしています。先生方の知識の豊富さに驚かされると同時に、高度な内容をわかりやすく丁寧に教えていただける講義は様々な疑問を一気に解決してくれます。また、座学だけではなく、グループディスカッションや発表の機会もあり、まさに通学制の大学院と変わらない充実した講義に満足しています。
さらに、スクーリングを通して様々な年齢や職業の方々と知り合い、多様な考え方や意見に触れられることがとても新鮮です。また、大学院へ進学してからは、様々な研究会や学会などに出席させていただく機会も増え、そこでの交流も広がっています。こうした恵まれた学習環境を積極的に活用しながら、自分の知識と経験をさらに積み重ね、自己研鑽に励んでいこうという気持ちがますます強くなっています。
人間の内的側面、外的側面からの研究を進めるほどに、新たに仏教学への関心が深まってきました。
1年次に履修しとても印象的だったのは「死生学特講」で、その名のとおり「生とは何か」「死とはなにか」を学問として熟考する科目です。私は職業上、様々な看取りを経験してきましたが、スクーリングでは生命倫理について幅広いテーマ(生殖補助技術、遺伝子診断、尊厳死、脳死、臓器移植など)で、グループディスカッションを行いました。レポートに対する先生のフィードバックでも丁寧にご指導いただき、自分自身の死生観を深めることができました。
また、「ターミナルケア特論」も新鮮な内容でした。主にICUなどの急性期の経験しかなかった私にとって、スピリチュアルケアを提供する専門職であるチャプレンの専門教育を終了し、臨床現場での経験がある先生の講義は、ケアの本質を考えさせられる内容であり、ケア提供者自身の在り方が問われていることを再認識しました。
これらの科目を学習するほどに、人間存在を全人的存在(身体的・精神的・社会的・霊的存在)として捉えるためには、いろいろな側面から学びたいと考え、全く学んだことのない仏教・思想系の科目である「浄土教特講」と「浄土教理史」を履修しました。知識がないので不安な面もありましたが、大切な教えを学んで人生観が変わってきたことを実感し、仏教思想を基盤とした看護の研究への興味が高まりました。
勉強はどうしても休日に集中してしまいますが、家族の理解に支えられ頑張っています。
私は「すきま時間」を有効に利用してコツコツと積み上げていくことが苦手な性格なので、時間的に余裕のある休日に集中して学習することが多いですね。自動車による往復なので通勤時にテキストを広げるわけにはいきませんが、電車で移動する際にはスマートフォンで文献を検索したり、ダウンロードした論文を読むようにしています。
精神的なストレスも多い看護師の仕事を続けながら、学びへの意欲を失わずにいられるのは、周囲の人々が支えてくれているからだと思っています。学部時代には、スクーリングで親しくなった仲間たちから、学習の遅れに対して的確なアドバイスや励ましの言葉を掛けていただき、なんとか大学卒業までたどり着くことができました。また、家事への協力など夫の理解がなければ、大学院にまで進むことはできなかったでしょう。ひたすら感謝している毎日です。
スケジュール
平日
夜勤も多く、まとまった勉強時間がなかなか確保できません。
短い時間では集中力が高まらないため、「すきま時間」は学習というよりは情報収集に充てています。
休日
休日は興味ある研究会や学会などにも積極的に参加し、視野を広げたいと思っています。また、スクーリングの際には、有明キャンパスの充実した図書館や自習室を活用しています。
心理学、人間学、仏教学を融合した研究に取り組み、人の気持ちに寄り添える看護師として成長したいと思います。
私は、これまで学んできた心理学と人間学に加え、大学院で新たに出会った仏教学にも強い関心を持つようになりました。そこで、「特定課題研究演習」にあたっては、それら3つの学問領域を融合したテーマで取り組んでいくことを構想中です。
私自身、まだまだ視野を広げ、知識を深めたいと思うとともに、人は生きている限り成長し続けなければいけないと考えていますので、今後も看護、心理学、仏教などに関する研究会や学会に積極的に参加し、自分の感性を磨いていきたいと思います。「今この患者や家族は何を望んでいるのか」を感じ取ろうとする努力を忘れず、患者や家族に真摯に向き合い寄り添うことができる看護師として成長していくことが目標です。